パラレルワールド
5歳くらいまでのこと
夜な夜なフラッと家を出て行っては
近所のお池を一周して何もなかったかのように
家のお布団でスヤスヤ眠りにつく
それが私の夜の不思議ルーティン
叱る父をよそに
母はそんな我が子を気味悪がることなく
引き止めもせず
月がキラユラ映るお池に落ちません様にって
ただただ後を追い歩いたんだって
パラレルワールド?
なんかわかるかも
子供の頃からデジャヴの海を漂ってきたから
初めてじゃないよ何これっていつも思っていた
いくつもの世界を行ったり来たりするような
揺らめく感じだったのよ
そのくせどこにも居場所がない気がして不安だった
あの水辺に呼ばれた者はパラレルワールドのパスポートを持っていたに違いない
水辺は別世界へスライドする出入り口?…
夜の記憶は消し去られても
唯一、娘の奇行を咎めるでもない母の笑顔が
確かな存在として瞳に焼き付いていた
お家へ迷うことなく帰るのよ
桜模様のお布団があなたを待っているからね
母は心で念じ続けていたかもしれない
徐々に
私はお池へは行くことが減り…
半信半疑で母から聞いてきたこの話
思い出そうにも身に覚えはなくて
幻夢のようにしか思えない
今の私?
もうデジャヴは薄れて現し身で生きているわ
母の笑顔を選んだのね
拠り所をここに見つけられたから
9/25/2025, 2:40:32 PM