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「私、旅行でホテルに泊まる時は必ず紅茶を飲むの。」
そう話すと、困ったような、でも優しい笑顔で
「俺は猫舌だから紅茶飲めないな。沢山持ってきてるんだね」
と話した彼。
猫舌なあの人に合わせて2人で会う時は紅茶は持っていかないようになった。
私は水が嫌いで、彼は水が大好き。
そんな彼に合わせて私は紅茶ではなくお水を一緒に飲むようになった。
あなたの嫌いなものは私の好きな物で、私の嫌いなものはあなたの好きな物だったから、どんどん好き嫌いを克服していけた。
紅茶も冬の寒い時期になったら、ぬるめでいいから2人で並んで飲めるといいななんて思っていた。
そろそろ秋が終わり冬がやってくるのに
今はひとり、
ひとりになってしまった。
もうあの時みたいにあの人と一緒に旅行に来ることは無い。
夏のウザったい暑さが一緒にあの人を連れて行ってしまった。

私は今日もひとりで紅茶を入れる。
暖かい湯けむりにつつまれ、秋の風を肌で感じながら口に含む紅茶は、ほろ苦い味がした。

10/28/2022, 2:44:52 AM