『勿忘草』
別れ際、彼から白い勿忘草をもらった。
「私を忘れないで…」
白い勿忘草の花言葉を呟いた。
彼は寂しがり屋だったもの。
わたしに忘れられたら、きっと泣いてしまうわ。
タンスに飾られた彼の写真を見る。
写真の中の彼は笑顔だった。
どうして白の勿忘草なの?
わたしに忘れて欲しくないから?
わたしから離れていったのは彼のほうなのに?そう考えると胸がズシリと重くなる。
白い勿忘草、
こんなものなくても忘れたりしないわ。
わたしは貴方を愛しているから。
わたしは貴方を忘れたりしないわ。
ずっとずっと覚えているわ。
タンスに飾られた、彼の写真に掛かっている黒いリボンをきれいに直す。
今日も写真の彼は笑顔だ。
笑顔の貴方が一番好きなの。
忘れたりしないわ。
わたしは彼の写真の前に勿忘草を飾った。
-fin-
2/2/2024, 1:19:24 PM