すず

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時間は残酷だ。如何様に目を背けようと、現実は全力を持ってして殴りかかって来る。

それは鍋蓋を持った僕を相手にマシンガンで蜂の巣にするような非情な行為としか考えられないこと。

8月31日、午後5時。
「僕は今悟りを開いた」
「バカ言ってねぇで、手ぇ動かせ」
「時として、時間は僕らに牙を持って襲ってくる」
「話聞けよ」

紺色のカーテンの合間からさす日差しは、未だに青青としていた。エアコンが流す稼働音はbgmとかし、耳の中で即座に溶けてゆく。机を挟む形で語らう僕らには1寸の余裕はなかった。

「しかし、しかしながらだよ。その牙すらも削り取ることだってできるはずだ」
「......なに?」
「僕たちが時間を殺すんだよ」
「......」
「時間とはつまり変化さ。それを停滞し、否定し、はては時間の象徴とも言える太陽をも克服するのだ。どうだい?乗ってみないかい?」
「あのさ、それって要は、諦めるってことだよな」
「あぁ、それが時間への叛逆さ」
「バカ言ってねぇで夏休みの宿題終わらすぞ!」
「やだぁぁぁぁぁぁぁ」
その日僕らが眠ることはなかった。


ちなみに、2人とも普通に宿題は終わらなかった。

8/31/2025, 5:04:26 PM