初めてカセットデッキが家にきたのは
弟がまだ小学校に入る前だった。
母が「ガチャって押してここが動いたら、いつもの様に歌って』と弟に言う。スイッチを「ガチャ」と押しテープが回転するのを見ては母が弟に合図をする。弟がお気に入りの歌を歌いだす。
「まいにち〜まいにち〜ぼくらはてっばんのぉ』とおよげたい焼き君の歌を歌う。
字の読めない弟は耳コピ覚えているのと、上手く発音できない事もあって「店のおっさんとぉ」や「うみににげとんだのさぁ〜」と歌っていた。
私はというと姉として弟の間違いを正そうとして母に抱き抱えられ手で口を押さえられていた。
弟が、歌い切ると母が機械を止める。そして又ボタンを押すと幼い弟の声歌と「間違ってるぅ」とか「私も〜」とか私と思われる声が聞こえてきた。初めて聞く自分じゃない自分の声といつも聞いてる弟の声。初めて自分の内と外で声が違う事を知った日。
9/26/2024, 8:42:01 AM