お題《花束》
公園を冷たく照らす青い満月。
月下――公園のゴミ箱に詰め込まれた色褪せた花束。
それを無言で見つめる青年。
あんなに愛しい日々を綴り合った恋人は、たった一言だけ言い残して去った。
「好きな人ができたの」
――それがどんなに残酷の言葉か。
――君は知らないから。簡単に告げられるんだろうね。
悲しさも後悔もないかのように、恋人の足取りは軽やかだった。その踏みしめた道には春が咲いているようで、青年とは正反対で。
「もうどうでもいいや。明日世界が壊れたって、僕にはどうでもいい――」
そうぽつり……とつぶやき、青年は歩きだす――その道には冬が、蒼く煌めいていた。
2/9/2023, 3:38:49 PM