お題《街の灯り》
「ようこそ死者が灯す街へ」
「死者が?」
昏い夜の底に彩れたその街に灯りはない。それでも夜を見透せるこの瞳のおかげで、困った事は一度たりともない。せいぜい悩みがあるとしたら、死者を呼び寄せてしまうくらいだろうか。
華美な装飾を好まない自分の纏うものは、旅路の途中で出会った《織姫》と呼ばれる少女だった。言の葉から織る、風から織る、水から織る――世界に存在するものなら、すべて可能であると。
――ねぇリュカ。僕にもできるかな?
俺は、さあなと心で返事し。それから独り言のように口にする。
「どうやって灯してるんですか、死者は」
「死者の、言の葉です。言の葉には、理なんて関係ないですから。言の葉には無限の力があるんですよ――それこそ禁忌すらも紐解いてしまう力が」
「…………」
《リュカは。リュカだけは、わたしを否定しないよね?》
俺が――終わらせる。
この滑稽な物語は、俺が始めたものだ。
俺が、いなければよかったんだ。
7/8/2024, 11:20:12 AM