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たまにはこういうのも、良いでしょ?

そう言って君はいつも僕を、
僕の知らない世界へ連れて行ってくれる。

普段なら僕が選ばないような道を選んで歩く君。


こんなに近所の道で、
僕はずっとここに住んでいるのに。
この道の先はあっちの道に繋がってるんだろうな、と頭の中で想像したり、道の入口を見て把握したりしているだけで。

その道に足を踏み入れると何があるのか、
どんな景色が見えるのか。
実際にこの目で見たことはなかったな、と。
君が言うところの“素敵なもの”を見つけるたびに
気付かされる。


それはレンゲソウの花畑であったり、
民家の庭で飼われているヤギであったり、
苔むした倒木に生えているきのこであったり、
黒い鯉ばかりしか泳いでいないと思っていた池に
一匹だけいる、色鮮やかな錦鯉であったり。


君のたまには、に付随するのは、
そういった珍しいものだけじゃあない。

いつも同じ道を好んで歩く、冒険を好まない僕が、
君のたまには、につい乗ってしまう理由は。


見たことのないものを発見するのと同時に見られる、
君の笑顔だ。


…実のところを言えば、
僕の目的は花や動物やきのこなんかより、
こっちなのかもしれないな、ということに、
薄々気付きながらも見ないフリをしている。


君の、弧を描いた太陽の光を反射しているような
眩しい瞳を見ていると、


たまには、が、たまにじゃなくて、
いつも、でも良いんじゃ無いかな、なんて。


君の笑顔に、僕も同じ顔を返しながら。


…まったく、僕らしくも無いけど。


今日もまた、たまには、についてくる、
いつも、の時間を独り占めで堪能しつつ、
そんな甘ったるい思考を持て余している。

3/5/2023, 9:46:23 PM