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きっと忘れない



手を繋いだ。
君は、力を込めると嫌がった。
君から繋いできたのに。

俺は力を込め続ける。
少しずつ、少しずつ強く。


「ねぇ、止めてよ。痛いの」

「大丈夫だってこれくらい」

「ほんとに止めて。ねえ、聞いてる?」


俺は力を込めた。
何かが崩れるような感触。
君は何かを叫んでる。
俺はそれを聞かずに、少しだけ笑った。


力の抜けた君の手。
君の指を優しく撫でる。
君の顔からは涙が溢れて、怯えた目で俺を見た。


俺は君の指先を逆に曲げた。
なんでって?
その目がどう変わるか見たかったんだ。

苦痛に歪んだ顔。
何を考えてるんだろうな。
俺の事嫌いになった?
そんな訳ないか。

「私、何か気に触ることでもした?」
「こんなことする人じゃなかった」

「俺の事知らなかっただけだろ」


なんだか楽しくなってきた。
手以外も俺にくれないかな。


「俺のこと好きなんでしょ?」
「俺はお前のこと嫌いだよ」


優しそうな微笑みも、恥ずかしがって俯く仕草も、
俺の隣を歩く時の揺れる髪も、触れてくる体温も。

気持ちが悪かった。


「知らなかった?」


俺は震える君を優しく抱きしめた。
君の心臓はドクドクと激しく鳴り続け、体温も異様に熱かった。


これが今から冷えていくんだ。
あぁ、堪らない。

今まで我慢したんだ。
楽しませてくれよ。

俺は抱きしめる腕に力を込めた。

8/21/2025, 3:45:17 AM