これまでずっと、暗い穴に閉じこもって世界の全てから自分を守ってきた。
嘲りや罵りから身を守り、愛情や助けの手からも逃げるように生きてきた。
愛することを怖がって、愛されることも拒絶してきた。
希望に縋って諦めない努力をすることがどうしても出来なかった。
一度の傷が重く響いた。強い雨風には目を瞑った。
ずっと、狭い世界で生きてきた。
本当は気に掛けてくれて嬉しかった。
本当は大好きって伝えたかった。
全てを跳ね除けるのは心が痛いよ。
でも期待するのが怖いんだ。
ひとりで悲しみに耐えるのはもう嫌だよ。
でもそうした方がまた傷付かなくて済むんだ。
もうこれ以上、心をかき乱されたくないんだ。
自分を守るふりをして周りを傷つけていることにも気付かずに、聞こえる全てを雑音にして耳を塞いできた。
私は暗闇に生きていた。
そうすることしか、できなかった。
❄︎
うん。そっか。
辛かったね。悲しい思いもたくさんしたね。
優しくされて裏切られるのはしんどいよね。
がんばっても報われないことの方が多いよね。
完璧ばかり求められて、疲れちゃったよね。
ここまでよく、歩いてきたね。
信じることって怖いよね。
注いだ愛情や信頼が、いつでも同じ量だけ返ってくるわけじゃない。
心が読めるわけじゃないからさ、分からないこともたくさんあって、分からないことが怖いよね。
この人なら絶対大丈夫って、自分の感覚だけじゃなくて確たる証拠がほしいよね。
でもそんなものはどこにも存在しない。
みんなはどうやって人を信じているんだろうね?
だれかに聞いてみたいね。
きっといつか、わかるといいね。
ね。あのね。
あんまり焦って走ろうとしなくていいんだよ。
明るい光が眩しすぎるときは目を瞑っていいんだ。
大きな音で耳が痛いときは塞いでいいんだよ。
ぼくはきみを前にも後ろにも引っ張りはしない。
きみの背中に寄り添って、その温もりを感じていたいんだ。
ただ、そうしていたいんだ。ずっと、ずっとね。
❄︎
本当は、信じたい。
本当は、大好きって言いたい。
本当は、差し出された手をとって一緒に歩きたい。
私のことも、信じていてほしい。
あなたに。
❄︎
足元はおぼつかない。
傷は重く痛み、心は変わらず平穏を求めている。
明るいところはまだ怖い。雑音も聞こえる。
でもあなたに会いたい。
あなたの声が聞きたい。
あなたと、ゆっくり話をしてみたい。
伝えなければ伝わらない。
伝わらなければそれは無と同義だ。
この気持ちは無かったことにしたくない。
今はまだ、細く差し込む光でいい。
いつかはきっと、あの太陽の下で。
『太陽の下で』
11/25/2024, 12:53:52 PM