僕は石ころだった。
川辺にある普通の。なんてことない石ころ。
隣に座った誰かに話しかけられていた。
その人はとてもキラキラしていて、綺麗だったと思う。
僕はその人の話を聞き続けた。
いや、聞かされ続けた。
耳がないので、曖昧にしか聞き取れかったけれども。
過去に何があったとか、それで今は1人だとか。
持っている力を、何に使ったらいいかわからないだとか。
口も手もない僕は、答えられない。
その頃はまだ自我などなかったが。
ある日のことだった。
今日もその人は隣に座って、言葉を吐く。
「なぁ、石ころ。お前は何が欲しい?
私は、話せる友人が欲しいよ」
これが、はっきり聞こえた最初の言葉だった。
僕はこの時、二度目の誕生を迎えたんだ。
まだ石ころのままだけど、自我を持って話せるようになった。
その人は驚いていた。でも、どこか悲しそうだった。
僕たちはそれから色々な話をした。
難しいことは僕にはわかなかったから、
ただ素直に思ったことを伝え続けた。
あの時もそう。
「なぁ、石ころ。私は、私だけがここに残っていて、
意味があると思うかい?」
「うーん、僕はあなたのおかげで、ここにいることに退屈しませんが、それではダメですか」
その人は、ふっと笑って
「そうか、じゃあ私がここで生きる意味もあると?」
「あると思いますよ。あなたが毎日、楽しければそれでいいと思います。僕は楽しいですし。」
抑えきれない笑いを隠すためか、
その人は膝に顔を被せたまま、震えていた。
「そっかぁ…ありがとう石ころ」
4/28/2024, 2:19:59 AM