―【 これからも、ずっと 】―
…
「俺は人間ではありません、だから生きた年も貴方達とは瓜の数程違います。」
長身の男は、深夜の海に反射する命の数ある星が浮かんだ夜空を目を細めながら見つめていた。
涼しい夜風が鼻を冷やし、少し身震いを俺はしたが…長身の男は動ずることもせず、
ただ。口を閉じ、ゆらゆらと優雅に揺れる海を眺めていた。それを見て俺も口を閉ざさるおえなかった。
少し考えてみた、…だが俺は彼がどれだけ生きているのかは屍になるほど理解出来なかった。
俺は暗闇の中、風に揺られながら首を傾げた。
そして、ふと…また長身の男が口を開いた。
「…例え話をしましょうか。…貴方達が見ているあの夜空に舞い満ちる星々より、
どこまででも進んでもある線路のような海より。ここからでは手も届かない宇宙よりも、
俺は、ずっと。ずっとずーっと…生きています。」
懐かしみ、そして何処か哀しむ様に。彼は相変わらずの不思議な、
優しく海底に引きずられているような、プラネタリウムで一人孤独でかくれんぼをしているような、
そんな上品だが隠し所のない人外と分かる、いつもの声で話した。
たが、その内容の意味を、俺はあまり理解出来なかった…いや、出来ないんじゃない。
理解したら、壊れてしまいそうな。
この魂が永遠と続くような言葉を、簡単に分かった気でいたくなかった。
「……分かりますか、
…いえ、分からなくても良いんですよ。」
長身の男は困った様に、無機物な微笑を俺に向けた。
「いいえ。むしろ、分かんないでいた方がいいんです。
……貴方が、分かんなくても。理解を拒んだとしても」
長身の男は立ち上がり、月を虚ろな目で見上げた。
「これからもずっと、俺は生きてゆくので。」
「……それは、それだけは。一生変わらないので」
そう、彼は振り返り…告げるように静かに言った。
……今日も月は綺麗だった。
これからも、ずっとこの景色は続いてゆくのだろうか。
それとも、変わってしまうのだろうか。
それは分からない。分かるはずも、俺にはなかった。
でも、変わるのなら…その時には、彼とまた月を見ていたいと思った。
…それまで、これからもずっと。
俺は生きていけるだろうか。
4/8/2026, 7:39:38 PM