—写らなかったもの—
金閣寺が水面の上にそびえ立っている。
「一階のところ見てよ」僕は指差した。
「あれ、金が張られてないね」
グループのトイレ待ちで、僕は好きな人と偶然二人っきりになった。
「お金が足りなかったのかな」
彼女はそう言って、くすっと笑った。
「そうかもね」
僕も釣られて笑ってしまった。
「そこ二人ー、こっち向いてー」
偶然通りかかったカメラマンが言った。僕たちは、レンズに向かってポーズをとった。
——
先生から封筒を受け取って開けると、たくさんの修学旅行の写真が入っている。
その中にハレーションが起きた一枚の写真。
僕はそれを見て、一週間前の金閣寺を思い出した。
「その写真、買ったんだ。実は私も買ったんだ。なんかエモいよね」
後ろの席から顔を覗かせ、彼女は言った。
「うん、わかる」
彼女も同じ写真を持っている。
それだけで胸が熱くなった。
「でさ、帰ったあとに金閣寺を調べてみたの。一階に金が張られてないの、わざとなんだって。各階ごとに世界観があるらしいよ」
「そうなんだ。でも、ぜんぶ金にした方が絶対かっこいいのに」
僕がそう言うと、庶民の発想だね、と彼女に笑われた。
逆光で写らなかったものも、僕は今も、はっきりと覚えている。
その思い出が、まばゆいほどに輝いていた。
お題:逆光
1/24/2026, 2:37:50 PM