燈火

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【心の灯火】


深夜、わざわざ出歩くことに意味など無い。
誰にも会いたくないけど、家に籠もっていたくもない。
だって、あまりにも退屈で窮屈な感じがするから。
なんとなく惹かれる店で時間を潰す。

入ったファミレスは定番の場所。
「お兄さん、よく遅い時間に来ますよね」
お冷を持ってきたウェイトレスに話しかけられた。
これだけ人がまばらだと店員も暇なのだろうか。

「今日もドリンクバーとポテトですか?」
「それで」会話が終わるならなんでもいい。
別にポテトは好きでも嫌いでもない。
ドリンクバーだけで長居は申し訳なく思っただけ。

何をするでもなく、ただスマホの画面を眺める。
こうしていれば、いくら暇でも話しかけてこないだろう。
「最近、新人ちゃんが入ったんですよ」
おかしいな。なかなか思い通りにいかないものだ。

「ほら、あの子なんですけど」おもむろに顔を上げる。
いかにも鬱陶しがる感じで、しかし好奇心が勝った。
凛とした雰囲気の女の子。見た目は高校生ぐらいか。
新人、と聞いてもしっくりこない。

こいつほどではないか、と思いながら彼を見る。
「なんですか? もしかして一目惚れしちゃいました?」
僕に油を売るこいつも新人。たぶん入って三ヵ月。
「しない。仕事戻れ」友達か、と内心ツッコミを入れる。

あれだな、新人を見守るのは形容しがたい気持ちになる。
エセ新人はさておき、確実に来店頻度が高まっている。
これは一体どういうことか。
きっと不慣れながらも一生懸命な姿に癒されるからだな。

9/3/2023, 9:31:24 AM