二人の世界に入り浸るカップルと、幸せそうな家族。
どうして、こんなに幸福で満ち溢れた空間で、私達は別れ話をしているのだろう。
向かい合わせるように座った彼の隣に座る、私と全然タイプが違う女。
つい最近まで、彼の隣は私のものだったはずなのに。
「……ごめん。そういう事だから」
それだけで話を終わらせそうとする二人。
思わず、彼の頬を引っ叩いてしまった。
「……私の、今までの人生を返せ」
彼が「可愛い服が好き」と言ったから、好みじゃない服を着ていた。
彼が「ショートヘアの方が好き」と言ったから、毎日丁寧に手入れしてきた髪を切った。
彼が「細いほうが好き」と言ったから、平均的だった体重を平均以下に下げた。
もう、私は以前の私じゃない。
クローゼットは可愛い服でいっぱい。
部屋の中は好きじゃない小物で溢れてる。
「…返せ、以前の私を返せよ…」
数年間、可愛い女の子を続けてきたから、私は本物の可愛い女の子になってしまった。
彼と一緒にいられるなら、それでも…と思っていた。
なのに…、なのに…。
彼は今の私とは対照的な、カッコいい女を選んだ。
ありのままの私を受け入れなかったくせに……。
「……どうして…」
8/26/2024, 12:36:47 AM