『どんなに離れていても』
君が僕の前からいなくなってまる1年が経った。
桜が散り終わり、青々とした葉が風に揺られる頃、君は突然何も言わずにどこかに行ってしまった。
最初の半年は必死に探した。
君との思い出を遡って、思いつく限りの場所に足を運んだ。
君が好きだと言っていた公園。
1人で泣いていた浜辺。
お気に入りのカフェ。
いつか一緒に行きたいと言っていた街。
そのどこを探しても、君の痕跡はなかった。
探し尽くしてからの半年は君の思い出を反芻してるだけの毎日だった。
噛んで味のしなくなったガムと同じで、思い出も日が経つにつれて薄れていく。
声も、顔も、言葉も。
本当の君なのか、僕の作りだした君なのか、どれが君が分からなくなってしまうほどに。
君のいない世界はどうにも味気なくて、雪の降らない冬のような、咲く花全てが同じ色のような物足りなさがある。
ねぇ、君はどこまで行ってしまったの?
旅好きなのは知っていたけれど、急にいなくなるなんて酷いじゃないか。
僕を置いていくなんて、酷いよ、うん酷い。
よくもこんな残酷なことができるなと思う。
それでも君を愛おしく思ってしまうのは、きっと、それが僕の生きる意味だからなのだろう。
今日で君が旅に出て1年が経つ。
僕もね、そろそろ覚悟を決めようと思うんだ。
君を探して僕も旅に出ようと思う。
旅好きの君を見習って、まだ見ぬ世界を見てみようと思う。
どれだけ離れていても大丈夫。
僕の旅のゴールは君だって決まっているから。
君に会うための長い旅を、僕も続けてみようと思う。
じゃあね、また逢える日まで。
2025.04.26
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4/26/2025, 1:26:54 PM