n.n.

Open App

月夜の灯りに、影一つ。


丘の上で夜空を眺めていた。


今日は満月なのかな?
とても月が明るい。

わたしは遠い遠い都会から来たから、
月の光で自分の影ができるなんて、知らなかったよ。

ぼんやりと星が輝くのを見上げ、
また目を下ろして自分の影を見ようと振り向くと。


月夜の灯りに、影二つ。


いつの間にか、あなたがわたしの隣に並んでいた。

本当に月が綺麗だね、なんて、
月の光に照らされた、優しい笑顔をこちらに向ける。


あなたは、その意味を知っているのかしら?

何の曇りも照れも見えない瞳を見つめ返して。


本当に、綺麗だね。


何も知らない顔をして、わたしも笑顔を返す。

あなたはきょとんとした顔をして、
不思議そうに首を傾げてわたしの瞳を覗き込む。


お決まりの台詞なんて、言ってあげないよ。


わたしはぺろりと舌を出して見せ。


熱い頬を感じながら、
特別な月夜の幸せに目を細め、笑い合った。

3/8/2023, 3:43:12 PM