粒の大きい塩で飾られたクラッカーが
赤い液体を抱え込んだグラスの奥で
色気の強いライトを浴びて輝く。
もうそろそろと左手の時計を確認した端で
元の色を忘れたであろう爪先がグラスを弾き
音に惹かれて発信源の表情を伺えば
頬杖をついた君と目が合う。
泣き腫らした涙袋がヤケに際立っていて
自分のカクテルの名前が不意に脳裏に過ぎった。
夜も更けて、席を立つ前にと
最後ぐらいは健康を気遣うつもりで
ビールとトマトジュースだけの
シンプルなカクテルを注文したのだが…。
酔いの回った見知らぬ彼女には
少々、引っ掛かる選択だったようだ。
赤くなった瞳がスルリと側へ寄って
同情は人にあげるものでしょうと
目前のグラスは攫われてしまっていた。
違いないが、黙ってくれてやるほど
優しい魔法使いにはなれそうにもなく
艶やかな髪から漂う甘い香りに
沸き立つ自身の中のアルコールを感じて
これが蒸発仕切る前にお代を頂いてやろうと
無防備に話し出した君へ距離を縮め微笑みかけた。
If you are Cinderella.
The time limit is until they sober up.
ー 目が覚めるまでに ー
8/3/2024, 6:18:16 PM