一夜の夢

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このまま海の底に、この身も心も沈めてしまおうと思った。
僕らの幸せは出口のない不幸だ。
これが、僕が裏切ったすべてに対するせめてもの誠意だと思った。
同時に、僕は変わってしまった自分を受け入れてゆける気がしなかった。

「波の底にも、都はありますから」
「君らしいね」

ああ、幸せだ。
あなたもそうでしょう。
僕はたぶん笑っている。
ようやくあなたを理解できた感動と絶望が体を突き動かす。

「あなたと僕は出会うべきじゃなかった」
「後悔してるかい」
「…ええ。いやと言うほど」
「私はしていないよ。来世でも」

これだからあなたが嫌なんだ。
僕は痛む身体で、反吐が出そうな微笑みを浮かべるあなたを強く抱き締めた。

ようやくあなたのことだけを考えることができる。
足は既に大地を踏み越えていた。

1/20/2024, 11:15:21 AM