「ねぇ、このバイトってやっぱ怪しいかな」
昼休み、友人が教室の隅でスマホを見せてきた。
よくあるバイト求人のアプリ画面に、デカデカと広告が掲載されている。クリスマスを意識したような、カラフルで装飾の多いポップなデザイン。
友達の指先で、画面が求人情報までスクロールされる。
✧• ───── ✾ ───── •✧
給料は廃棄予定のお好きなプレゼント5つ。
休憩時にはオーナーからのホットココアを振る舞います。
トナカイの多い職場ですが、人間も大歓迎!
✧• ───── ✾ ───── •✧
「……なにこれ」
「やばくない? 応募するの勇気いるよねぇ」
闇バイト求人にしては分かりやすすぎる、ウケるよね、と友達はケラケラ笑って画面を閉じた。
サンタのバイトみたい、と呟けば、友達は目を丸くして「ほんとだこれサンタか! ブラックだ!」とはしゃぐ。
やっぱ大手の求人アプリにも普通に怪しい募集ってあるんだね、怖いね、とひと通りの会話を交わして、あっという間に5限のチャイムが鳴った。
――眠れない。
いつもなら真っ先に船を漕いでしまう数学の授業で、私はノートもとらずに黒板をじっと眺めながら、サンタのバイトのことばかり考えている。
ついに我慢ができなくなり、わざとらしくペンケースや教科書で隠すようにして、こっそりスマホを取り出した。
『冬 短期 トナカイ』
着ぐるみとか、イベントスタッフの求人に埋もれて――何スクロールかして、ようやくさっきの求人を見つけた。
馬鹿げている。危険かもしれない。
それなのに。
✧• ───── ✾ ───── •✧
気が早いですが、メリークリスマス!
サンタのクリスマスはもう始まっております(最高だ!)
冬になったら、お待ちしております!
✧• ───── ✾ ───── •✧
冬になったら。
トナカイに囲まれて仕事をするのもいいかもしれない。
2024/11/17【冬になったら】
11/18/2024, 1:00:54 AM