Sweet Rain

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「ねぇ、このバイトってやっぱ怪しいかな」

 昼休み、友人が教室の隅でスマホを見せてきた。

 よくあるバイト求人のアプリ画面に、デカデカと広告が掲載されている。クリスマスを意識したような、カラフルで装飾の多いポップなデザイン。

 友達の指先で、画面が求人情報までスクロールされる。

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 給料は廃棄予定のお好きなプレゼント5つ。
 休憩時にはオーナーからのホットココアを振る舞います。
 トナカイの多い職場ですが、人間も大歓迎!

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「……なにこれ」
「やばくない? 応募するの勇気いるよねぇ」

 闇バイト求人にしては分かりやすすぎる、ウケるよね、と友達はケラケラ笑って画面を閉じた。

 サンタのバイトみたい、と呟けば、友達は目を丸くして「ほんとだこれサンタか! ブラックだ!」とはしゃぐ。

 やっぱ大手の求人アプリにも普通に怪しい募集ってあるんだね、怖いね、とひと通りの会話を交わして、あっという間に5限のチャイムが鳴った。


――眠れない。

 いつもなら真っ先に船を漕いでしまう数学の授業で、私はノートもとらずに黒板をじっと眺めながら、サンタのバイトのことばかり考えている。

 ついに我慢ができなくなり、わざとらしくペンケースや教科書で隠すようにして、こっそりスマホを取り出した。

『冬 短期 トナカイ』

 着ぐるみとか、イベントスタッフの求人に埋もれて――何スクロールかして、ようやくさっきの求人を見つけた。

 馬鹿げている。危険かもしれない。
 それなのに。

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 気が早いですが、メリークリスマス!
 サンタのクリスマスはもう始まっております(最高だ!)

 冬になったら、お待ちしております!

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 冬になったら。
 トナカイに囲まれて仕事をするのもいいかもしれない。

  2024/11/17【冬になったら】

11/18/2024, 1:00:54 AM