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 君は泣かない。
 きっと泣かない。
 たぶん泣かない。

「君たちの仲間である××健治くんが、夏休み中に不慮の事故で……」
 校長先生が難しい顔で全校集会を開いたときも。

「この度はご愁傷さまでございます」
 母さんの押し殺した声が響く葬儀場で、僕に焼香してくれたときも。

「まだ中学生だったのに……」
 近所のおばさんたちが通学路で僕の噂話をしているときも。

 君は全然泣かなかった。


 だのに、ごめん。僕がうっかりしていたせいだ。

 終業式の朝一番に君の下駄箱に突っ込んだ、夏休みの予定表。
 今日から毎日遊ぶぞ!って。
 じいちゃん家に帰る日以外全部に赤丸してた。
 君は季節外れのインフルエンザで学校に来なかったのに、僕はうっかりそれを忘れて帰った。

 下駄箱の奥に押し込められてたソレに君はとうとう気がついてしまった。
 自分の部屋でぐしゃぐしゃになったソレを開いた君の目が、ぐっとうるむのを僕は見た。それでも、唇の端をワナワナさせて耐えていた君の目から、転がるように一滴涙がこぼれる。
 それに慌てて目を閉じたせいで、今度は両目から涙の筋が伝ってきた。君はその事実によりいっそうショックを受けて、その後ボロボロに泣き出してしまった。

 ごめん。本当にごめん。
 夢の中では泣けないんだって僕の冗談を、君は信じてくれていたのに。

2/6/2024, 10:07:02 AM