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お題:子供の頃は

 俺は高校の時からの友達と、ざわつく喫茶店でコーヒーを飲みながら、子供の頃の話を聞いていた。
「子供の頃は……そうだね」
 向かいのクラスメイトは、楽しそうにスプーンでブラックコーヒーを混ぜながら、楽しそうに思い出話をした。

「僕は毎日、当時住んでいたマンションの7階のベランダから、いつも道路を見下ろしていた。
 とても落ち着いた。いつか自分もそこからダイブしたらラクになれるんじゃないかなっていつも夢を見ていたんだ」

 俺達は今、子供の頃の話をしていたはずではなかったのか?
 なんか不意にヘビーな話が出てきて、俺はビビった。

「そんなある日、たまたまベランダも窓が空いていたんだよね。すごく天気も良くてさ。
下を見下ろすと、植えられてた桜もきれいに咲いてて。ああ、きれいだなって。
 そこで僕は、ベランダの窓から空へと舞ったわけだけど……」

 ええええっ!?
 俺はそれこそ内心で悲鳴を上げた。
 喫茶店でするにはあまりにも重すぎるだろそれは! というのか、やったの!?
 声を出すのを思いとどまった俺を褒めてほしい。

「でもまぁここにいてこういう話をしているってことは、生きてるってわけでさ。その後もまあいろいろあって……今に至るんだよね」
 そういって、スプーンでブラックコーヒーを混ぜながら、楽しそうに思い出話をした。
「お、おう」
 俺はアイスコーヒーのストローをかみながら、唸るのが精一杯だった。
 彼はのってきたのか、更に話を続ける。
「それで、自分の夢ってなんだろうと見つめたんだよね。そうして僕は進路を決めたんだ」
 そうだった。そして彼は薬学科へ進んだ。
 俺はふとたずねてみた。
「なんで薬学科にいきたかったんだ?」
「……それはね秘密だよ秘密」

6/24/2023, 10:12:16 AM