案山子のあぶく

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◎帽子かぶって
#45

私には隠し事があると目元を隠す癖があるらしい。
全くの無意識なので自覚は未だに無いが、長い付き合いの親友が教えてくれた。
帽子をかぶってるときは特に顕著にその癖が現れるのだとか。

「──……あ。何か隠してるだろ?」
「いや、何も?」
「えー?本当に?」

ついっとこちらを指差して笑う。

「目、隠れているよ?」

こんな風に気付かれてしまう。
でも、全部話してしまう必要も義理も無い訳で。

「内緒」
「君はいつもそう言う。なんだよ、最期くらいは良いじゃないか」
「つまらない事だよ」

親友の膨らんだ頬を撫でて返す。
それでも、

「もう隠さなくても良いだろう?墓場はすぐそこだ」

なんて親友が穏やかに言うものだから。
喉の奥が切なく震えて、思わず口から言葉が漏れ出た。

「─────。」

親友は驚いた表情をして。
そして満足気に笑った。

「そうか、ありがとう。……私も、君を─────。」

最後は途切れ途切れではあったが、何を言っていたかは分かっている。

「あぁ、もっと早くに言っていれば。何か変わっていたのだろうか」

もう物言わぬ親友の表情はとても幸福に満ち満ちている。
長いようでとても短かった月日の奔流に思いを馳せながら、私は帽子を深く被り空から落ちる雫を受け止めた。

1/28/2025, 2:42:37 PM