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宝物

どこまで走ってもお月さまが追いかけてくる!

ぼくが見つけた大発見だと思ったのに、とっくに解明されていたことを知ったときはがっかりしたものだ。

あれから、ぼくが考えることはありふれたことで、つまりぼくは特別でもなんでもない平凡な人間だという不安が、消えないシミのように心に居座っている。

だからあの子を見てどきんとしたときも、こんなふうに思うのはぼくだけじゃない。みんな同じだ、と自分に言い聞かせたんだ。
ぼくだけの特別じゃない、誰から見ても愛らしいあの子。
どんなに思ってもこちらを振り向いてくれないだろう。


だけどあの子は一目散にぼくに向かって走ってきた。
「わんわんわん!」
「あらあら。ジュリーはユウくんが気に入ったのね」

ジュリーはぼくのかおをペロペロなめてしっぽをぶんぶん振っている。宝物がぼくに向かって飛び込んできたんだ。

11/20/2023, 12:01:49 PM