「まさか勇者たちがこれほどの力を持っていようとは
だがこれで終わりではない
私は異なる世界へ転移し、より強力な軍勢を率いて帰還しよう
そして、その日より私の伝説が始まるのだ」
目の前に豪奢な格好した大男がいる
コスプレか?
にしてもなんでこんな時間にこんなところで
「フ、転移に成功したようだな
どれ、記念にひとつ大きな花火でも上げるとするか」
なんか変なこと言ってるな
役になりきってんのかぁ?とか思っていたら、大男が手から炎を発射
俺の車に着弾し……爆発炎上した
は?
何が起きた?
おいおいこれヤバくないか?
「フハハハ!
この世界でも我が魔法は万全!
もう少し試してみるか……ん?」
大男は手を出して力んでいる
しかし何も起こらない
「なんだと?
この世界には魔力がないのか!?
もう魔力切れで魔法が使えん!
これでは私はただの人間と変わらんではないか!」
ペラペラと独り言で自分がピンチであることを喋っている
あれ、こいつもうヤバいことなんにもできないんじゃねえの?
魔法使えないとか言ってたぞ
……ところで、こいつ俺の車爆破したよな?
なんか恐怖が引いてムカついてきたな
騒ぎになったあとだと面倒だから、適当に事務所に連れて行こう
「ここにいると大変なんで、ちょっと俺の仕事場に来てもらえます?」
「む?
貴様、我に協力するというのか?
良い心がけだ
褒美は……」
「いいから早く来てください」
俺は長話し始めそうな大男をさっさと事務所へ誘導
目撃者は夜明け前でいないが、爆発音でここらへん一帯の住人は起きている
事務所へは目立たない裏道を使った
大男を待合室で待たせ、上司や同僚に事の次第を報告
みんな、驚くほどすんなり信じてくれた
異世界作品オススメしといてよかったぜ
そして、みんなで行動を開始する
「す、ずびばぜん
もう、勘弁じでくだざい」
大男……自称魔王を、俺たちはボコボコに殴り倒した
魔法の使えない魔力切れな魔王はただの一般人並みの力しかないようだ
「謝ってすみゃあ責任っつう言葉はいらねえんだよオラァ!」
「兄貴の車爆破して、サツに睨まれたらどうすんだ、あぁぁ!?」
「つーか、睨まれるだろぉ
こっちは被害者なのになぁ
どうしよっかなぁ
なぁオイ」
運の悪い魔王だ
俺たちみたいに、物騒な商売を本業とする輩の車を爆破しちまったんだから
「あのね、我々は責任取る時ってね、指をね、切断するんだよね、スパッとね」
「ひぃ、助けてください!
なんでもしますから!」
俺たち相手に言っちゃいけないこと言っちゃったなぁ
なんでもはダメだよ、なんでもは
「じゃあね、君にやってもらいたい仕事があるんだよね
なぁに
そのガタイで威圧してくれればいいだけだよ
僕たち、お金貸してる人がたくさんいてね
その人たちからね、お金を返してもらいたいんだ
とりあえずはそんな感じ
ゆくゆくは君も体とか鍛えてね、我々に舐めた真似してくる奴らに痛い目を見せたりとかね、そんなこともしてもらうよ?」
「はいぃ!
荒事はやって来たので、大丈夫です!」
いいように使い捨てる気満々だな
ザマァねえな
ま、戸籍も何もないから使いやすそうだ
うまくいきゃあかなり役に立ってくれそうではある
さぁ、魔王様にはせいぜい頑張って、馬車馬のように働いてもらうとしよう
大丈夫、飯は食わせてやるし、成績次第じゃもしかしたら高待遇してくれるかもしれねぇよ?
そして、ウチの組織で魔王伝説が幕を開けるかもな
10/30/2025, 11:37:29 AM