海月 時

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「地獄に堕ちろ。」
遠い昔。俺が殺し屋を営んでいた頃、誰かに言われた言葉だった。そんな事を思い出しながら、俺は今日も笑う。

「あの世でも、暴れてやるよ。」
これが、俺の最後の言葉だった。俺は、趣味で殺し屋を営んでいた。別に、人殺しの理由なんてない。ただのストレス発散だ。そんな狂った日々を過ごしていたが、ついに捕まってしまった。判決は、死刑。当たり前だ。特に驚きはしなかった。むしろ、あの世への生活を夢見ていた。俺は、笑顔で地獄へ堕ちて逝った。

『ここが、地獄か?』
辺りは真っ暗で、何もなかった。ただただ、冷たかった。
『お前はここで、侵した罪を償え。』
突然、低い声で告げられた。周りを見渡しても、誰も居ない。
『俺は何もしていない。償うことなんてない。』
声の主は、深くため息を付いた。
『ならば、二度とお天道様を拝めないだろう。』
それだけを言って、声の主は消えた。何が、罪を償えだ。上から物を言いやがって。いつか、下からの景色拝ませてやる。
『それにしても、地獄ってあるんだな。地獄があるなら、天国もあるのか?まぁ、どうでもいいか。』
独り事を言いながら、俺はこれからの事を考えた。このまま地獄で暮らすのは、退屈だ。ならば、これはどうだろうか。俺は、一つの考えを思いついた。
『天国をここに作ればいいんだ。』

俺はあれから、天国と地獄のボスを殺した。勿論、物理で殺したのではなく精神を殺した。生前に身に着けた技の一つだったので、すんなりと精神を侵食できた。今では、俺に逆らう事はない。
『天国と地獄。二つが交わった場所。これこそが、俺の王国にふさわしい。』
俺は今日も、笑い続けた。

5/27/2024, 2:33:25 PM