はるさい🌸

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【揺れる羽根】
羽ペンって昔っぽいけどそこが良い、みたいなことない?
子供の頃に一回、羽ペンに憧れてこっそりじぃじの書斎の机から羽ペンをくすねたことがある。
じぃじが使っていた羽根ペンは黒が基調となっていて羽根がふさふさしていて、いつまでも触っていたかった。
けどその後にバレてこっぴどく怒られちゃったけど…
それから私がその羽根ペンを手にしたのはじぃじが死んで一ヶ月のことだった。
書斎の掃除をしていたら出てきたのだ。
紙に試し書きをしてみたらまだ使える。
じぃじの形見だと思ってもらった。
今では私の大切な宝物となっている。

「……っと、こんなとこかな」

私は羽根ペンを置き、ノートを閉じる。
私はたまに自分の持っているものをモチーフにこうやって小説をノートに書くのが趣味なのだ。

「最近はなんかスランプ気味なのかな…一回書くことから離れてみようかな?」

文章に魅力も感じなくなってきたし、書き始めた当初よりもワクワク感がなくなった気がする。
暗い気持ちのまま、椅子から立ち上がり部屋の電気を消す。
部屋のドアを閉めた。
じぃじの羽根ペンは暗闇の中、黒と同化して見えなくなった。

10/25/2025, 11:19:52 AM