宮平和実

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「逃れられない」

 最近、昔の記憶を思い出す事が多い。その記憶は、自分が嫌だなと感じた、思い出したくない記憶を仕事をしていて、ふとした時に思い出し、集中力が切れる。
「席を外します。飲み物、買ってきます」
私は席を立った。
「はーい。分かった」
隣の席の同僚が返事をした。
 仕事場を出て、自動販売機で何を飲もうか?と選んでいると、トントンと優しく肩を叩かれた。振り返ると、幼なじみの君がいた。
「よう!どうした?なんか元気ない?」
「うん。ちょっとね、仕事中に、思い出したくない記憶を思い出して、集中力が切れたから気分転換をにしきたんだ」
「そうか。それは辛いし、苦しいよなぁ」
「うん」
「俺だったら、過去は過去だ。って割り切ろうとするけど、なかなか難しいよな」
「うん。君でもそう思う事、あるんだね。私、過去から逃れられないって思うんだ。」
「あるよ。あっ、嫌だなって思った経験があるから、気をつけようとするし、その経験があったから今がある!って思えば少しは楽になるか?」
思いついた!という表情をして君は言った。
「そうだね。少し楽になるような気がするよ」
「良かった」
「でもよく私が悩んでいる事があるって分かったね?」
「そりゃ、何年も一緒にいれば分かるだろう」
「そっか。そうだね」
私は笑っていた。
「やっと笑ったなぁ」
君は嬉しそうな顔をした。
「話を聞いてくれてありがとう」
「うん」
「あっ、そうだ、飲み物買いにきたのに、まだ買ってないや」
「私も」
自動販売機で、私はお茶を、君はコーヒーを買った。
「じゃあな!仕事、無理するなよ」
「うん!」
 私は、過去からは逃れられないと思った。それでも前へ前へと一歩ずつ、進んでいく。いつか、笑って日々を過ごせるように。

5/23/2024, 2:59:29 PM