雪弥

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一年前には、こんな風になるなんて思っていなかった。
白い十四歳の犬と暮らしていて、立って歩いて尻尾を振って食欲もある、まだまだ元気だった一年前。
夏にぐんと食欲が落ちた。それまでのご飯では飲み込むことができなくなっていた。
秋には、ふやかしたものでも飲み込めなくなって、ジェル状のご飯を針のない注射器で流し込んでいた。
それでもご飯は嬉しいようだった。
秋に、犬は亡くなった。老衰だった。

信じられないほど泣いて泣いて泣いて、年を越して、黒い犬を迎えた。
びっくりするほど落ち着きのない、まだ赤ちゃん犬。

カーペットの端を噛む赤ちゃん犬を叱りながら、「生きていてくれれば何だって」と思う話。

6/16/2024, 3:41:40 PM