同期との飲み会では、つい気を許してしまう。一緒に働いている先輩の、仕事はよくできるのだけど、自分にも他人にも厳しい人だという話しをしていた。私はいつも迷惑をかけてしまうとも。
それを少し遠いところから聞いていた君が、「なになに? その人」と言いながら、いつもの人懐っこい笑顔で近づいてきた。話してみると、近々会社の行事で先輩と一緒になることがわかった。「その人と会ってみたいなあ」。いつになく真剣な少し厳しい顔をして言う。時々、妙な正義感を発揮することがあるのだ。「まさか、先輩のところに行ったりしないでよ」。「大丈夫」。
行事の後、先輩が話しかけてきた。「そういえば、君の同期という人に会ったよ。面白いね、あの人」とイタズラっぽい顔をして言う。こんな顔もするんだと思いながら、少しくだけた感じで色々な話ができた。
次の集まりの時、君に聞いてみた。「何話したの?」。「別に。どんな人か見たかっただけだから。とても優秀な人と聞いてます、って言ったかなあ」。「あれから、少し話しやすくなった気がする」。「そう? じゃあ、ビールおごってもらおうかな」。「何それ?」。呆れながらも、少し感心してその人懐っこい笑顔をながめた。
「行かないでと、願ったのに」
11/4/2025, 6:48:06 AM