望月

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《明日世界が終わるなら》

「……ねぇ、明日世界が終わるならさ、何したい?」
「俺? あー……ゲーム、かな」
「マジで? 世界終わって自分も死んじゃうのに、やりたいことゲームなの」
「だって急に言われてもよぉ……そういうお前はあんの、やりてぇこと」
「僕はね、あるよ」
「あんのかよ」
「君と一緒に起きて、僕の作った朝ご飯食べて、買ったばっかの新作のゲームして、お前が作った不味いお昼食べて、服買いに行って、それで暑いねってアイス食べて、二人でオムライスを作り合って晩ご飯食べたら、お風呂入って、昔からずっと好きなゲームして、遊び疲れて一緒にソファで寝るの」
「なっげぇな……つか、全部俺とかよ。あと別に俺の作った料理不味いとは限らないだろ」
「それで僕らの寝てる間に、世界は終わっちゃうの」
「おい、無視すんな」
「してないよ~! でもさ、僕のしたいこと、素敵だと思わない?」
「あ? あぁー……まぁ、な。そこそこいんじゃね? 細けーけど」
「でしょ! だから今からしちゃおう!」
「はぁ? まだ夕方だぞ」
「じゃあ明日しよ、ね」
「…………新作のゲーム、そっちが用意しろよ」
「大丈夫! ちゃんとネットで買っとくから、今日はスーパーよってから僕ん家行こう」
「ハイハイ、財布はよろしく~」
「それ他人に聞かれたら誤解されるって。お前そういうとこ直した方がいいよ?」
「るせ、どうせ誰もいねえからいいだろ」
「それはそうだけどさぁ」
「んで! 行くんだろ、スーパー」
「行く! 怒んないでよ〜」
「怒ってねぇし! ……晩飯、なにすんの」
「君の好きなのにしよっか」
「……じゃあ、寿司!」
「それ僕が握んの!?」
「冗談に決まってん、」
「いいよ、任せな。その為に練習してきたから」
「いやいけんのかよ!」
「え? そっちが言ったんでしょ」
「言ったよ、言ったけど……」
「ふふ、君はお寿司が食べたいんでしょ? いいよ、僕に任せなさい」
「おぉ……!」
「その代わり酢飯作りは手伝ってね」
「もちろん! それくらいはできるし」
「んじゃ、早くスーパー行って帰ろっか」
「おう!」
「……このスーパーも、人造人間が働いてるね」
「そりゃそうだろ、今どきどこの店もそうだよ。なにお前引きこもってたの?」
「コンビニで全部済んでたの! ……買いたいものは買ったし、帰ろ」
「ん、持つわ。……にしてもマジで外歩いてて人間に会わなくなったよな」
「数が減っちゃったもんね。随分前はラジオで何万人が残ってるとか流してたけど……今はそれもなくなったし」
「人造人間にはそんな情報は要らねぇからとか? 最近は俺ら以外見てねぇ気もするしな」
「そうだね。今世界がなくなっても、僕ら以外わからないのかな」
「……かもな」
「……そっか」
「つか! そんなことより、さっさと寿司食いてぇから、家まで競争しねぇ?」
「荷物持ってるデバフありでいいの?」
「ばーか、俺が余裕で勝つわ」
「そこまで言うならいいよ、その勝負乗った!」
「…………疲れた」
「はい僕の勝ち~おつ~」
「うぜぇ」
「ほら早く手ぇ洗ってきな? 酢飯作ってよ」
「俺の寿司の為だもんな……やるか」
「僕のでもあるからね?」
「……酢飯の酢ってどんくらいなの?」
「僕に聞く? ……それくらいでいいんじゃない、わかんないけど」
「ま、どうせ食うの俺らだし、いっか」
「そうそう。……さて、握りますか」
「…………上手くね?」
「僕の才能が開花しちゃったか、流石に」
「そして美味い」
「お前の才能も開花してそうだね、流石に」
「いやマジでうめぇんだって、食ってみ?」
「……これ作った人天才です。シェフを呼んで、誰かー!」
「お前だわアホ。でもマジ天才」
「寿司とか初めて握ったけど楽しいね」
「初めてなのかよ!? じゃあガチでヤバい」
「いいじゃん、成功したし」
「……あー、食った食った。寝るか!」
「それ太るて」
「でも正直眠くね?」
「流石にか……僕も寝る」
「んじゃあ、明日はお前のしたいことしよーぜ」
「じゃあ明日は一緒に起きるとこからだから、僕と一緒に六時に起きてね?」
「……善処しマース」
「朝ご飯完成しても起きてこなかったら、起こしてやるよ」
「頼むわ」
「それじゃ、おやすみ」
「ん、おやすみ」
「……もし明日世界か終わるなら、こうやって普通の生活して、それで寝てる間に終わってほしいなぁ」
「——もし明日世界が終わるなら、こうやって二人で笑って、寝てる間に終わっちまえばいいのに」

5/6/2024, 11:05:47 AM