"白い吐息"
私は父の白い吐息を見るのが好きだった。
父がベランダへ行くと私もついて行って、近くでそれを眺めていた。
たまに輪っかになったり、空気中で右往左往して静かに消えていく姿が見ていて楽しかったから。
清々しい青に溶けていく白に惚れ込んでいた。
けれど近くで見ていると喉が苦しくなって、こほこほと咳が出てくる。
そんな様子を見て父が「あっちへ行っていろ」と私を手で追い払う。
仕方がないので私は部屋に戻って父の後ろ姿を少し眺める。
飽きたらソファに転がって手足を伸ばしたり、うつ伏せになって脚をパタパタさせたり。
それでも父の背中に意識は向けたまま。
空に舞い上がる白い吐息は綺麗で、幻想的だった。
父はそれを知ってか知らずか、短くなったそれを灰皿に押し当てて、新しく取り出して火をつけた。
12/7/2025, 1:12:50 PM