千花

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【別れの言葉】

「また明日」
 そう言ってから我に返り、溜め息をついた。一人になったんだからもう言う必要ないのに。
昨日まで隣で眠っていた相棒は、夜の間に旅立った。私が起きた後、いつものように撫でてみたらやけに冷たかったのだ。
 老衰。夜中に鳴き声で起こされなかったから、それ程苦しまずに逝けたのだと信じたい。
 少し前から近々こうなる日が来るとは覚悟していた。でもいざ来てみると早いなと思ってしまう。
 また明日って。翌日も元気でいてくれると信じていたからこそ、毎日寝る前にかけていた言葉だったのに。
 小さな頃から私の傍にいてくれた相棒。人間と犬では寿命が違うから叶わぬ願いとわかっていたけど、もっとずっと一緒にいたかった。
「ありがとう」
 私は少し声をはりあげて言った。この言葉が天国にいるであろう相棒に届いていることを願いながら。
「またいつか」
 どうか、天国で再び会えますように。

5/22/2024, 2:11:52 PM