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 形の無いものと言ったら何を浮かべるだろうか。突然初めての先生が生徒に出した、哲学的な問いは私を思考の底へと落とした。残酷なことに、一人ずつ答えていくらしい。さあ、運命の順番はというと。
「じゃあ手前の奴から。」
ガッツポーズが心に現れ、脳内にハレルヤが流れる。四季の自然に悩まされ、エアコンは当たらず、早く帰れない私の席、通称『主人公席』。恨みしかない主人公席を今回初めて喜んだ。
 さあじっくり考えよう。形の無いものは基本見えなかったりする。文字は形があるから違う、生命も過去も時もだいたい形で表せられる。生命は我々だったりさまざまな生き物が形を成している。過去は写真やら遺跡やらそれこそ本だったり文字がそれを表している。時は時計が一番それらを示していると言っても過言ではない。
 再び思考の底で彷徨うはめになった、どうすればいいんだろう。周りと被ったっていい、唯一なんて求められていないのだから。変に目立つことを言ったら、今後への影響とこれまでの印象崩壊が大変なことになる。
 そうだ、感情って言おう。世間一般の単語であり、全員が、いや、大体が納得する答えだ。「感情には形があるだろう?」と言われるやも知れないが、感情の形であって、感情そのものに形はない。(問い詰められたら適当にそれっぽいことを言って難を逃れるだけだ。)気持ちというそのものに形はない、表すことは可能だが。
 ついに私の番となった。
「最後、はい。」
「私は、感情だと思いました。」
「何故?」
「真っ先に思い浮かんだからです。それと、感情は五感で認識は出来ます、しかしそれらはただの表現であって本来の形自体はないと考えたからです。」
「…なるほど。じゃあ今回は、君かな。」
「へ?」
と言われると、黒ずくめの何者かが現れて私を何処かに連れていく。抵抗したが、無駄だった。誰もこちらを見ていなかった、まさか。
「哲学的思考を持っている子は大好きなんだ、だから色々あんな実験させてもらうよ?…ありがとうね、反面教師になってくれて。」
 最初から仕組まれていたのか、ああそういうことに逆らったら巻き込まれたら自分が被害を受けるから、だんまりとしている。この後何をされるか分からないが、これだけは言える。
「先生、形の無いものは不変です。だから、この感情は変わらずに残っていきます。それは置いといて」
「ありがとうございます、自ら犯罪者であることを明かしてくれるなんて。」
「二人は、倒しました。みんな、協力してくれてありがとう。終わったら通報して、パーティをしよう。さあ、最後にもう一度協力してほしい。駄目、殺さない。死は形があるようで無いもの、ですから。」
 叛逆の狼煙は形として有るけどね。

9/24/2024, 4:54:03 PM