kokoro

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@君と出逢ってから、私は…


優しくて、運動神経抜群で、頭が良くて、可愛い。
そう、私は誰から見ても”完璧“な存在。
私が怪我をすれば、みんなが心配する。
私が喜んだら、みんなも喜ぶ。
私はそれが嬉しかった。
自分が大切にされていることではなく、私一人でみんなが笑顔になってくれるから。
だからずっと”完璧“でいればいいと思ってた。

中学校に上がっても私は“完璧”だった。
綺麗に結び上げたポニーテール。
相変わらずの運動神経。
みんなから頼られる頭脳。
一人を除いて、誰からも愛される可愛さ。
そう、“一人を除いて”。
「なんで自分に嘘ついてんの?自分を大事にしろよ」
初めて言われた否定的な言葉。
私は嘘をついてる?自分を大切にしてない?
違う。私は“みんなの為”に生きてる。
みんなが笑顔だと私も嬉しい。
それが私の幸せ。私は自分を一番に考えてる。
「自分のこと大事にしてるよ」
私一人でみんなが笑顔になってくれる。
それでいい。それがいい。
「バカ、わかってねえな。
 俺は誰の為に自分を大事にしてるかって言ってんの」
「”みんな“の笑顔の為に大事にしてんなら、
 それは“自分”を大事にしてるとは言えねえ」
その言葉は私についた鎖をボロボロに崩していった。

スカートと一緒に買ったスラックス。
肩につかなくなった髪の毛。
嫌いな勉強は染み付いて離れない。
好きな運動はそのままで。
”僕“が可愛くなくたってみんなを笑顔にできる。
「本当は元気な僕っ子なんだよね」
可愛いのは女の子みたいな見た目だけ。
丁寧な言葉使いだけ。
僕一人でみんなが笑顔になるのは、
僕が“これぞ女の子”って存在だったから。
可愛い女の子だったから。
……でも違った。
イメチェンしたの?かっこかわいい〜
ショートもいいね!
可愛いは変わらないなぁ〜
見た目で人は決まらない。みんなの笑顔は変わらない。

「もう自分に嘘ついてねえな!」

変わったのは、笑顔の数が一人分増えたくらい。

5/6/2023, 10:09:58 AM