霜月 朔(創作)

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風鈴の音



冷たくも冷静な社会は、
経済の活性化という、
免罪符を掲げ、
止まること無く走り続ける。

動き続ける、
社会から弾き出された、
心の柔らかい人間は、
残酷な世の中から、
容赦無く切り捨てられる。

人として生きることも、
過去を懐かしむ事も、
赦されず。
心の傷を抱えて、
華やかな街の影で、
息を潜めて生きるしかなくて。

誰の目にも止まらない、
誰も気付きはしない、私。
居ても居なくても、
何も変わらない。
何も変えられない。

そして、私は独り。
哀しい程に青い空を見上げ、
帰る事は叶わない、
故郷を思う。

少しだけ涼しい風が吹き、
遠くから聞こえるのは、
何処か淋しげな、
風鈴の音。

7/13/2025, 6:57:53 AM