ストック1

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寒い
寒すぎる
なんでこんな凍える朝を迎えなきゃならないのか
俺は昨日まで四天王だったのに
勇者パーティが四天王最強の俺と戦う機会がなく、そのまま魔王を討伐したものだから、命を失わずに職を失った
まぁ、俺は忠誠を誓ってなかったし、むしろ嫌いだったから魔王がくたばろうが、別にどうでもいいんだけど、働いてた立場からすると非常に困っている
魔王配下の立場を失った俺はお尋ね者で、後ろ盾もなく、住むところもない
そして見つかれば処刑は免れないだろう
この世の底辺に達した気分だ
どれだけ惨めな人生になっても死ぬのは御免だから、なんとかしなければならない
そもそも俺は就職にことごとく失敗して、腕っ節がたまたま強いからしかたなく魔王軍に行った結果採用されちゃっただけで、別にやりたかったわけじゃないんだ
食うために努力してたらいつの間にか四天王最強になってただけだし
なんだよ四天王って
魔王が死んだらなんの力もないじゃないか
ただの喧嘩自慢だよ
あーあ、魔族になんて生まれるもんじゃないよ
人間社会はけっこう人権意識高いらしいんだよな
魔族社会は弱肉強食が基本としてあるから、どっかでつまづくともうお先真っ暗なんだよ
今は魔族全体がお先真っ暗なのはとんだ皮肉だけど
四天王になっといてなんだけど、俺の性格って人間社会向きなんだ
他人を蹴落とすとか、大嫌いでさぁ
だから就職うまくいかなかったんだけどね
魔王軍に入ってからは本当に苦痛だったよ
今の状況よりはだいぶマシだけど
ハァ、俺も人間に生まれたかったなぁ
誰か俺を人間にして人生やり直させてくれ
あ、流れ星だ
叶うかな
ははは、そんなわけないか
なんか、頭がボーッとしてきたな
体もうまくうごかない
これ、ヤバいかも
俺、死ぬ感じか?
なんだよ
くだらない人生に、くだらない末路とか、ほんとなんなんだよ
少しくらい、いい思いさせてくれたっていいじゃないか
こんなの、酷すぎないか……?



「たしかに、魔王四天王の着ていた服だ
魔族は死ぬと肉体が崩壊するから、おそらくは……」

「これで一安心ですね
いつまでも逃げられたら、みんな不安でしょうから
……ん?
先輩、あそこ!」

「四天王のマント?
む、あれは赤ん坊か!?」

「こんな寒空の中ほっといたら死んでしまいます!」

「しかしなぜマントに?
……死にかけた四天王が捨てられた赤ん坊を温めたのか?
不可解だな……
いや、そんなことはどうでもいいな
早急に保護せねば!」

赤ん坊?
俺は人間になれたのか?
なんか、頭がフワフワしてきたな
記憶が抜け落ちてってる気がする
あれ、俺、なにやってたんだっけ?
俺は……
ん、さむい

んんん

「赤ちゃんが泣き始めました!」

「とりあえず、泣く元気はあるようだ
近くの建物へ急ぐぞ!」

11/1/2025, 11:14:16 AM