明日にはいない人

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1年前ぐらいに「アディ・ラルーの誰も知らない物語」という本を読んだ。

主人公のアディは小さな村の古いしきたりだとか女らしさを求める村の人々に嫌気が差していた。子供らしい反抗的な態度だけれど、活発な明るい少女だ。

アディは成長し、村の多くの女性と同じように結婚しなければいけない年になった。結婚式当日、アディはとうとう村を逃げ出し暗い森の中で悪魔に祈ってしまう。
「ルールやしがらみにとらわれない自由」を。

悪魔はその願いを叶えてくれた。アデイは自由を手に入れたのだ。永遠の自由を。

そう、アディは不老不死になった。それも、「誰の記憶にも残らない」というおまけ付きで。

アディはその後、永遠の命とともに長い長い旅をする。苦しみ悲しみ時には願いを叶えた悪魔を呪ったりしながら、、アディは強く生きていく。

誰の記憶にも残らないアディだが、2巻で転機が訪れる。なんと、アディと同じように悪魔に願いを叶えてもらった青年と出会うのだ。青年はアディとは逆で出会うすべての人に好意を向けてもらえる代わりに1年しか生きられないという契約をしていた。

私は青年の話を読みながら酷く心が痛んだ。

私も悪魔に願いを叶えてもらえるならきっと青年と同じ願いをすると思ったからだ。たとえ寿命が1年になるとしても。

皆はアディと青年どちらに共感するだろうか?もしくは違う願いを持っているのか、そもそも願わないという選択肢もある。

私は青年に共感した。多くの人に好かれたい。出会うすべての人に愛されたい。これは私の心を充分に満たしてくれる。家族からは信頼され、友人からは親友として認識され初対面の人から笑顔で話しかけてもらえる。それは私にとって理想の人生だ。

死ぬ間際には、きっと1年前の契約のことを思い出すだろう。

私は、私だったら1年前に契約したことを後悔するだろうか?

腐っても相手は悪魔だ。良い思いはしないのかもしれない。けれど、私は悪魔にすがってしまうだろう。

永遠の自由と愛に溢れた短い人生。あなたはどちらの方が良いと思う?


6/16/2024, 3:59:45 PM