「先生、泣かないでくださいよ」 そう言って俺は、目の前で顔を濡らしている彼にティッシュ箱を差し出す。目元に触れる薄紙は、瞬く間にしとどに濡れていく。 ああ、鬱陶しい。すぐ泣くこの人も、世話を焼いてしまう俺自身も。 好きじゃないのに、見離すことができない。「ありがとうございます」 そんなことを言われてしまえば、なおさら。 でも、好きじゃない。 あんたなんか、大嫌いだ。
3/26/2022, 8:02:59 AM