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遠くの声


「…聞こえる?こっちだよ…」

夜中の2時、サトルは毎晩のように聞こえるその声に悩まされていた。耳元でささやくような、でもどこか懐かしいような声。
最初は夢かと思った。でも、録音機を枕元に置いて寝ると、確かに声が入っていた。

「さとる…ここにいる…」

怖い、でも気になって眠れない。彼は声の正体を突き止めようと決めた。
録音を分析してみると、音の周波数に不思議なゆらぎがある。機械では説明できないようなパターン。そして、その中に微かな「座標情報」が含まれていた。
導かれるようにその場所へ向かうと、古びた公衆電話が一台だけぽつんと立っていた。
恐る恐る受話器を取ると、声がした。

「やっと来たね、サトル。ずっと、話したかった。」

それは未来の自分だった。

「今、お前がやろうとしていることをやめなきゃ、全部が終わる。」

唐突にノイズが走り、通話が切れる。サトルは呆然とした。
彼は帰宅後、録音データを確認する。
だが、そこに声はなかった。代わりに、冷たい電子音声で一言だけ。

「テスト完了。記憶の上書き、成功。」

サトルは目を覚ました。白い天井。見知らぬ部屋。自分の名前も思い出せない。

ドアの外から、誰かが言う。






「次の被験者、準備できました。」

4/17/2025, 2:37:39 AM