ほろ

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「明日自分が死ぬとしたら、最期に会うのは誰がいい?」
机に伏せて、だらんと伸ばした手の先でペン回しをしながら問うてくる。補習用のプリントは、裏返されて彼の下敷きになっている。
「先にプリントをやりなさい」
「俺は、先生に会いたいよ」
ペン回しが止まる。じ、と見上げてくる茶色の目が、冗談ではないと語っていた。
「プリントが終わったら話を聞いてやるから」
「先生に見ててほしい。最期まで先生の顔を見ていたいし、先生に俺の最期を覚えていてほしい」
「はいはい、早く終わらせなさいね」
「終わってる」
下敷きにしていたプリントが引っ張り出される。
確かに、空欄は全て埋まっていた。しかも、ざっと見る感じ全問正解である。
「だから、お話しよーよ、先生」
「…………お前ってほんと、嫌な奴」
にぃ、と奴は口角を上げる。本当に、嫌な奴。
まあ、仕方ないな、なんて奴の前の席に座る、俺も俺だけれど。

12/17/2023, 12:03:41 PM