『日の出』
”日の出って何色なの?”
彼の絵を見たらつい口から出た疑問
だって、日の出をモチーフにしたという彼の絵には
紫、オレンジ、ピンク、群青、緑、黄色……
たくさんの色がグラデーションを生み出していたから
「確かめみる?」
ニヤっとイタズラに笑う彼は
”明日4時に正門集合”とだけ残して帰ってしまった
翌朝、まだ夜とも言えそうな時間帯に家を出ると
正門集合と言っていたはずの彼が家の前にいた
「あれ?なんでいるの?」
「いやー…よく考えたらこんな暗いのに女の子を1人で出歩かせるのは良くないなって思って」
「そっか、ありがと笑」
近すぎず遠すぎずの距離を保ったまま学校に着くと
彼は屋上まで私を連れていってくれた
「わぁ…悪いことしてる気分笑」
「実際悪いことだしな笑笑」
「確かに笑」
横に並んで夜明けを待っていると
ゆっくりと、でもあっという間に太陽が顔を覗かせた
「きれい……」
「ほら、日の出は何色?」
「………オレンジにしか見えない」
「はぁ??そんな単純な色なわけないだろ」
両頬をむぎゅっと鷲掴みにして目を合わせる彼
その瞳には彼が見ているであろう世界が広がっている
「……あ」
「ん?どした」
私1人では見ることの出来なかった綺麗な世界
彼のレンズを通した景色は宝石みたいに輝く朝日が昇っていた
1/3/2025, 2:40:26 PM