蛇の舌

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涙の跡

朝一番、窓ガラス越しのツレに、涙の跡を見つけてしまい、俺は大いに動揺した。今は一周回って冷静だ。
……嘘だ。
足元にあった薪を蹴飛ばしてしまい、派手な音を立てて転がった。世辞にも盗賊の風上にも置けない。だがいまはそれどころじゃない。
息は詰まり、動悸ばかりが激しく胸を叩く。
「いったい、どうしーー」
「やぁ、徹夜明けの朝日は目に染みるね……」
そう言って、ツレは隈をこさえた目元を拭った。
「……………寝ろ」
俺はそう声を絞り出すことしかできなかった。

7/26/2025, 2:14:17 PM