もう終わりだよ。
人生を悲観した者たちは、深い森の中へ消える。
命の終わりを迎える場所を、静かなる森に求めて。
だが、静けさの漂う森の奥深くには、たくさんの命が息づいている。
命の終わりを迎える場所でなく、生まれ出づる場所なのだ。
人間だけが、思い違いをしている。
さあ、帰れ。
お前たちの生き続けるべき場所へ。
笑い、苦しみ、嘆き、憤り、命を燃やし続ける場所へ。
生命を得たものが、自らそれを手放すなど、私たちには思いもよらぬこと。
私たちの静かなる森へ、その歪な死生観を持ち込んではならない。
さあ、帰れ。
お前たちの住む世界には、コンクリートジャングルが広がっている。
そこでどんな決断を下すのかはお前たちの自由だ。
お前たちが作り上げたものだから。
生を無駄にする愚かな決断も、私たちが咎める筋合いはない。
だけど、理解はし難いな。
静かなる森を破壊し、私たちを奥深くに追いやってまで、お前たちが築き上げた理想郷がこれなんじゃないのか?
食物連鎖の頂点に立ち、万物の王として君臨するのは、お前たち人間だと思っていたが、どうやら買い被りかもしれないな。
その生の終わりを望む王がいるものか。
ましてや、これほどの進化を遂げているというのに。
・ ・ ・
与えられた命を捨てようと思うほど、複雑な思考回路を持ってしまった私たち人間の、呪われた性だ。
お前達には分かるまい。
森を捨て、この世界を作り上げた私達だけが、引き受けてしまった悲しい性だ。
だからこそ、その命の終わりを、静かなる森で迎えることを願うのかもしれない。
ともに生きるべきお前達が暮らす、命の故郷を求めて。
5/11/2025, 1:19:07 AM