Theme:終わりなき旅
「生命は終わりがあるからこそ輝くんだ。ずっと旅をしていたら、故郷が恋しくなることだってあるだろう?」
エルフのくせに冒険者をやっている変わり者の相棒は、そんなことを言っていたっけ。
「そんなものかな。寿命が決まってる俺からしたら、不老不死なんて羨ましいけどな」
確か、そんな言葉を返したと思う。あいつは少し寂しそうに笑い返した。
旅は、生命は、いつか終わるからこそ美しい。
終わりなき旅をずっと続けてきた相棒は、今、目の前で旅の終わりを迎えた。
俺がこの手で、あいつの旅を終わらせた。握った短剣にまだあいつの体温が残っているように感じる。
この温もりもいずれ消えてしまうんだろうけど。
「こんな終わり方でも、それでも美しいって思うか?」
問いかけてみても答えは返ってこない。
相棒の身体の下に描かれた魔方陣が輝きだす。
誰かの生命を犠牲にして、終わってしまった生命を呼び戻す禁忌の魔術。
これを使えば俺の婚約者を終わりから連れ戻すことができる。
彼女の終わりを受け入れられなかった俺は、終わりに焦がれるあいつを贄にした。
「やっぱり俺は終わりは好きになれないよ」
言葉が終わると同時に、彼女の瞼が静かに持ち上がっていった。
5/30/2024, 1:04:52 PM