降りしきる小雨の中、私は唐傘をさしながら、家路を歩いていた。
村から町へ買い出しと売り物の野菜を売るために来たのだが、急に雨が降ってきた。
その途中、弱々しい鳴き声が聞こえた。ふと横を向くと、雨で濡れた子猫がいた。
ひとりぼっちなのか母猫を探しているのかしきりに弱々しく鳴き声を上げていた。
あなたも一人…なのね。ふと、自分の心情と重ねたが、自分の家では飼えない。
あの時貰った唐傘…今はいない大切な人のことを思い馳せつつ、子猫の上に自分の唐傘を置いてみた。
子猫は鳴き声を止め、ふと私の方を見始めた。黒い瞳。まるであの人のよう…。
そう思っていたら、雨が止んだ。後ろを振り返ると、私に想いを馳せている人がいた。
心配して来てくれたのだろうか? その人は息を切らしていた。帰ろうと言われ、私は小さく頷いた。
私はふと後ろを振り返ると、唐傘と子猫は消えていた。
11/16/2024, 1:58:55 AM