Frieden

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「些細なことでも」

「⬜︎⬜︎、そろそろお昼寝だね。こっちにおいで!」
「おひるねおひるねー!⬛︎⬛︎ちゃん、だっこ!」
「お〜よしよし!ベッドがキミを待っているよ〜!」

しばらく抱っこしていると、ボクの小さな兄は眠ってしまった。この子は抱っこされるのが好きで、お父さんがいた時にはよく抱っこをせがんでいたなぁ。

すやすやと寝息をたてるきょうだいをベッドに置いて、ボクは静かに部屋を出る。勿論、脱出が目的なわけではないが!!!
「やぁ、この部屋の管理人くん。ちょっと兄を頼んだよ?」

「マッドサイエンティストさん。何かご用事が?」
「野暮用だよ。」
「そうですか。お気をつけて。」

ニンゲンくん。ボクはキミがとても心配なんだ。
そう長い時間が経ったわけでもないのに、あの家の荒みようには驚かされたよ。一体どうしたんだい?

あんまりにもキミのことが気になって仕方ないから、ボクは少々久しぶりにキミと通信をしてみようと思ってこの部屋に来たんだ。

さて、ボクが置いてきた端末の番号は〜……あった!

しばらく続いた待機音の後、ニンゲンくんが出た。

「やあ!!!ニンゲンくん!!!漸く出てくれたね!!!ボクはキミのことがあまりにも心配だったから、こうやって通話を始めたのさ!!!ほら、キミも何か話したまえ!!!」

「……別に話せるようなことなんかないから、こんなとこで時間を割いても楽しくないだろ。」

「どうしてそんなことを言うのさ?!!ボクはキミと話すためにここに来たんだよ?!!それに、楽しいか楽しくないかを決めるのはこのボクだから!!!勝手に決めないでよ!!!」

「それはともかく!!!とりあえず何か話を始めてくれないかい?」

「……。」「そうだなあ……今日のちょっと嬉しかったことを3つほど教えてくれたまえよ。」「……嬉しかったこととかないんだけど。」「こらー!!!なんとか絞り出しなさい!!!」

「……じゃあひとつ目。なんとなく虫刺されの薬を塗って扇風機の風を浴びたら涼しかった。」

「そりゃよかったね!!!でもニンゲンくんは変わり者だなあ!!!確かにそれ涼しいけどさ、蚊に刺されたわけでもないのに虫刺されの薬を塗った?!!なんとなくで?!!」

意外とボクがいなくてもニンゲンくんは実生活をEnjoyしているのかもしれないなぁ……。

「よーし!!!それじゃ、ふたつ目を教えてくれたまえ!!!」
「……久しぶりに蝶を見た。」「おやおや、どんな蝶を見たんだい?!!」「多分、モンシロチョウ。」

「あーんなあっつい中、冷房もなしで逞しく生きている彼らってすごいよねえ!!!部屋に入れてあげたらどうだい???」
「それはちょっと……。」「だよねー。」

生き物の感性っていうのは不思議なものだ!分からないことがまだまだ沢山あって興味深いよ!

「ところで」「何?」「みっつ目はもう決まりだよね?」「え?」「『え?』って何さ。」「まさか……照れているのかい?!かわいいなあ!」「本当に分からないんだけど。」「え」

「……まあまあ聞こうじゃないか!ほら、みっつ目!いいエピソードを聞かせてくれたまえ!!!」

「今朝は涼しかった。とか?」「……。」
「なんでむくれてるんだよ。」「……。」
「何?なんだよ?」「違ーーーーーーう!!!」

「みっつ目は!!!決まっているだろう?!!」「はぁ?」
「ボクと!!!はなし!!!してること!!!」
「あー……なんでこっちが接待しなくちゃならないんだよ。」

「ほら!!!みっつ目!!!もういっかい!!!」
「ボクと!」「ぼくと」「お話し!」「おはなし」「したこと!」「したこと」「正ーーー解!!!」

「いやぁ照れるなあ!!!まさかそんな風に思ってもらえているなんて!!!さすがはボクだねえ!!!ハッハッハ!!!」
「……何も言うまい。」

「あ、ごめん。そろそろ用事あるから、また今度───」
「ちょっと待って!!!大事なことを伝え忘れていたよ!!!」

「裁判の日程だが、ついに明日に決まったよ!!!」
「早いな……。」「うちは『即断即決』をモットーにやってきたからね!!!」

「とりあえず……震えて眠るといいよ……?まあ冗談だが!!!」

「それはさておき、気をつけて用事を済ませてくるんだよ〜!」
「……ありがとう。」
「それじゃあ、また明日!」

通信が切れた。
でも、キミと話していて分かったのは、またきっと、ずっと仲良しでいられそうだってことだ。

また、ニンゲンくんと色んなところに出かけたいな。
色んなことをしたいな。色んなことを学びたいな。

そうすればきっと、みんなもっと笑顔で暮らせるよ。

「前回までのあらすじ」────────────────

ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!

調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!

それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!

……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!

そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!

……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!

それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。

もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。

どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。

そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。

712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。

事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!

だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……タダで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。

牢獄の中とはいえ、随分久しぶりにふたりの時間を過ごせた。小さな兄が安心して眠る姿を見て、今までずっと研究を、仕事を続けてきて本当によかったと心から思ったよ。

きょうだいのカウンセリングの付き添いがてら、久しぶりにニンゲンくんと話をしたんだ。いつも通り話がしたかったけれど、そんなことはできなかった。

ボクの心は、ボクの気持ちは紛れもない本物だと信じて欲しかったけれど、受け入れてはもらえなかった。
機械のボクはもう、キミに信じてもらえないみたいだ。

でもまあ!!!きょうだいもボクも元気に牢獄暮らしが送れているうえ、旧型管理士の彼女も調子がよさそうだから、当面はよしとしようか!!!

多分ニンゲンくんの事情聴取も終わっている頃だろう。あとは何度か取り調べを繰り返して、いつか来る裁判の時を待つだけだね。

……というかこの「あらすじ」、長すぎるね!!!何がどう荒い筋だと言うんだい???……また作り直さなければ!!!
ふえぇ全然時間が取れないようぅ……。゚(゚´ω`゚)゚。
あとどこに書くのがいいのかもわからないよぅ……(´•̥ω•̥`)

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9/4/2024, 10:04:39 AM