300字小説
昔も今も
『太郎くんはみかんを○個持っていました。それを○人で分けました。一人何個になったでしょう?』
小学校のありふれた割り算の問題が私は嫌いだった。兄弟とでも友達とでも、一つ足りないと、いつも我慢させられるのは大人しい私だったから。でも
「ちゃんと平等に分けろよ!」
「俺のを半分やるよ」
幼馴染はいつもそう言って、私に分けてくれた。
「お父さん、お母さん、僕、お父さん、お母さん、僕……」
息子が買ってきたみかんを一つずつ分けている。
「……一つ足りない……」
「お母さんは良いわよ」
「ダメっ!」
「良くないよな」
ぷうと頬をふくらませた息子に夫が頷く。昔どおり自分の分を分けてくれる夫とそんな夫に似た息子だ。
「ありがとう」
お題「みかん」
12/29/2023, 11:27:44 AM