『喪失感』
君が居なくなってから何度朝を迎えたかしれない。
急に水平線を見たくなり、夜中にタクシーに飛び乗った回数は優に二十回は超えた。
誰もいない海辺に佇んで、誰もが有難がるご来光を独り恨みがましく見つめる。
あの日、街を飲み込んだ巨大な波は鳴りを潜めて慎ましい顔をして足下を揺蕩っている。
どうか無事でいて欲しい……。誰もが一縷の望みに縋っていたにも関わらず、大半は無言の帰宅となり、君も例に漏れず白い花となって帰ってきた。
どうして……? 何度も自分自身や誰かや何かに問い掛けたけど、未だ納得する答えなんて返ってこない。
君からの答えじゃなきゃ納得出来ない。
いや、それでもきっと納得なんてしないだろう。
急に水平線を見たくなり、夜中にタクシーに飛び乗って誰もいない海辺に来た。
そして今日も独り朝日を、世界を、君を恨みがましく見つめて想う。
9/11/2023, 9:52:40 AM