言葉出さずに正義を成す。心眼豪傑拳を学ぶ俺は、修行半ばで悪の組織にお師匠様が殺されてしまった。その後の修行は独学で行い、なんとか心眼豪傑拳Bくらいまで高めることができた。その時、空から内なる心に直接『…それでいい……』とお師匠様の声が響いた。お師匠様が見守ってくれている!
よし。修行とともに復讐の旅に出よう。お師匠様を殺めた組織を壊滅させるのだ。
『…それでいい……』
最初の村に着く。
娘さん、ここらで飯を食べるところはないか?
「はい、私の家では握り飯を売っております。梅干しと塩結びのどちらがよろしいでしょう?」
そうな、梅干しをいただこう。
『…それでいい……』
あ、お師匠様は梅干しお好きだったな……
娘さん、どこか泊まるところはないか?
「我が家は旅籠でもあります」
お聞きはしてみたが、実は私は修行の身、銭を持たない。薪を割って払うでよいか?
『…それでいい……』
お師匠様、静かに!
「は?」
いや、こちらのことでござる。
「では、薪割りと一晩の用心棒としてご滞在ということで……」
何か訳があるのか?
「実は毎晩、悪人どもがこの村にきて暴れる奪うの大騒ぎなのです」
そうか、修行がてらお守りしんぜよう。
『…それでいい……』
さて。陽が落ち店先の提灯が灯されると村は昼とは別の賑わいを見せる。そこへ西から強面のごろつきがゾロゾロとやってきた。
狼藉者とは奴等か?
「はい」
まかせておけ。
『…それでいい……』
こら待ちなさい。この村に入れるわけにはいかぬ。
「なんだ、お前は? 一人で何ができるってんだ、者ども、かかれ!」
手にした鞘を振り払い、並ぶ抜き身が10本! そのうちの一本がギラリと光るが……。
えいっ。
Bとはいえ心眼豪傑拳、バタと一人倒れる。
『…それでいい……』
次の一本は下から切り上げられるが、
えいっ。
『…それでいい……』
次は正面から切先が現れる。
えいっ。
『…それでいい……』
お師匠様、少し静かにしていてください!
『…それでいい……』
「何をぶつぶつ言っているんだ。今日のところは許してやろう。者ども、引き上げるぞ!」
ふう、ふう、はあ、はあ。
息が荒く自分の修行の至らなさを感じる。
『…それでいい……』
いや、これで良いのでしょうか?
『…それでいい……』
お師匠様はそれしか伝えられないのですね……
『…それでいい……』
お師匠様は喋り過ぎ、破門にします!
『…それでいい……わけなかろう……』
……。
あ、違うことも言えるじゃん!
4/4/2026, 8:26:26 PM